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ふたりしてほとんど裸でひっくり返っていたのを見かねたマーロが「本日休業」の看板を出して、ふたりの尻を蹴り飛ばすようにして外へ叩きだした。少し歩くが、街外れの森に清流が流れている。川の流れが速く子どもに危険なこともあり、ほとんどの町民は海の方へ行ってしまうので、この季節、森は意外と穴場なのだった。
「お前、泳げる?」
冷たい水に元気を取り戻したラングに、キッドがニヤリと笑みを煌かせた。
「競争する?」
まさに水を得た魚である。二人は先程までの怠惰な態度をすっかり忘れて、岩の上から跳び込んだり、小さな滝を滑ってみたり、どちらがより長く潜れるか勝負したり、子どものような遊びぶりだった。
「ラングも、あれで体動かすのは好きなのよね」
木陰で休憩していたマーロのとなりに腰を下ろしながらカレンが微笑んだ。
「しかし、あんなにはしゃいでいると夜は二人とも役に立たないだろうな」
「文句言ってる割には、ずいぶん嬉しそうな顔」
保護者の顔をしているマーロをカレンがからかった。マーロが慌てて顰め面をしてみせたのがまたおかしくて、カレンは声を上げて笑った。その笑顔をマーロが眩しそうに見ている。カレンが気が付いて、またマーロに小さないたずらをした。
「見とれてるの?あたしも水着を持ってくればよかった」
「ちがう。空を見てたんだ。いい天気だと思って」
「なによ。あたしより空が好きなの?それじゃ空と結婚すればいいじゃない」
カレンがわざとらしく頬を膨らませてそっぽを向いた。マーロが慌ててカレンの手を握る。
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