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 やれやれ、面倒なことになった、とは、ラングも思った。だが反抗はしなかった。ロズに紙袋を預けてふたりのちょうど真ん中の距離まで歩み出る。まあ特等席で決闘を楽しむ権利を得たのだからいいだろう。これで真っ当な決闘だったらもっと良かったのだが。  片一方があんまり子どもに過ぎる。この髭男も後で周りにとやかく言われないために、公平を期そうと通りすがりの男を立会人に指名したのだろう。遅れてきたラングは決闘の理由は聞いていなかったが、なんであれ、可哀そうな坊やだと改めて少年を見やった。 (本当にまだ子供じゃないか) 近くまで来てやっと少年の顔が見えた。その顔に、ラングはちょっと驚いた。想像よりも造作の整った顔は、それで余計に女たちが案じているのかと納得するぐらいには美しかったが、ラングが気になったのは何よりもその表情である。まだ頬の辺りに幼さの残る顔には、この期に及んで一切の動揺も恐怖も見えなかった。 (諦めてる……って顔でもないな) 虚無の顔つきではなかった。明らかに、それでいて静かに、決意を秘めた顔だった。ひょっとすると、これは本当に隣村で死闘を潜り抜けてきたのではないか、そう思わせる気配がある。するとこの決闘もどう転ぶかわからないぞ、そんな気持ちに表情を引き締めた。 「よし。三カウントだ」     
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