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古い夢を見ていた。旧式の銃を抱いて、幼い自分が厩の陰に屈みこんでいる夢だった。こうして夜明けを待っていたのは、いつの頃だったろう。もう何年も前のことだ。気が付くと目の前に強面の男がいて、その男が差し伸べた手を掴んだところで、夢は一度途切れた。冷たい風が吹いた。真っ白な骨がヌックと地面から突き出ている。ずいぶん一度に時が流れて、もうおれは死んだのか、と思った。乾いた心で自分の白い骨に触れようと思い、立ち上がろうとしたその瞬間、痛みに目が覚めた。
「…………生きてた」
見知らぬ誰かのベッドで少年は目覚めた。体を起こそうとすると、夢の中と同じ痛みが襲う。傷のせいだろう。あのクソ野郎ども。痛みに顔を顰めながら少年は思った。
諦めてまた布団を引き上げながら視線を滑らせた。自分の銃がすぐ近くのサイドテーブルに置かれているのを確認して、安堵の息をひとつ。それから首と目だけ動かして室内を見回した。広くはないが清潔感のある部屋だった。女の部屋にしてはあまりに淡泊だ。鏡もない。独り身の男の部屋だろう。
(眩しいな……今、何時だろう?)
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