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プロローグ ところで銀行員のお給料っておいくら?
「ねえ、加奈。うちの銀行の給与っていくらか知ってる?」
午前十一時半。
神山銀行光瀬町支店(かみやまぎんこうみつせまちしてん)の女子更衣室にて、たったひとり。
少し早めの昼食を摂りながら、五十嵐吟子(いがらしぎんこ)は電話をかけていた。
相手は高校時代の友人、岡部加奈(おかべかな)である。
『わかんないよ。銀行だから、けっこういいんじゃないの?』
「冗談でしょ。全行員平均で月に二十九万円だよ。平均年収も、四百万円ちょっと」
『え、でも四百ってけっこう貰ってない?』
「これは出世しているオジサンたちまで含めてこの金額なんだから。若手の銀行員となると、そりゃもう低いよぉ」
『そっかあ。……うん、冷静に考えると、確かに銀行員で年収四百って、ちょっと微妙かもねえ。銀行員って、やっぱりもっと貰ってると思ってた』
「うちは結局、田舎の銀行だからね。……あれ、ところで、どうしてこんな話になったんだっけ?」
『吟子ちゃんが、彼氏が欲しい彼氏が欲しいって言うから、わたしが言ったんだよ。それなら同じ銀行の人と付き合ったらいいじゃんって――そしたら吟子ちゃんが、神山銀行の人なんて給料も安いしなあ、なんて言いだして』
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