1-① 理想はハーレー、現実はカブ

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 吟子は、光瀬町支店で、外回り営業を任されていた。  いわゆる、渉外(しょうがい)である。  銀行は、顧客からお金を預かり、そこに金利を載せて、別の顧客に貸し出すことで、利益を得ている。  さまざまな手数料(例えば振込の手数料など)で利益を上げている一面もあるが、基本的には、預かり→貸し出しのビジネスで儲けているのだ。  と、いうことはお金を預けてくれるお客様と、お金を貸してくれと言ってくるお客様がいなければ、このビジネスは成立しない。  そのお客様を見つけにゆく、あるいは、既にいるお客様に、 「なにか御用はありませんか」 「新しくお金を借りませんか」 「お金をまた、うちの銀行に預けませんか」 「お金のことで、なにかトラブルはありませんか。お困りではないですか」  ――などと聞いて回るのが、渉外の役目だ。  ゆえに、渉外こそ銀行の実戦部隊といっても過言ではない。渉外が預金や融資の案件を獲得し、なおかつ、お客様が直面している、さまざまな金融に関する問題を解決してこそ、その銀行は経営が成り立つし、顧客の信頼を得ることができる。  神山銀行は地方銀行だ。  地域の信頼を得て、それに応えることが企業の宿命とされている。     
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