302人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
吟子は、光瀬町支店で、外回り営業を任されていた。
いわゆる、渉外(しょうがい)である。
銀行は、顧客からお金を預かり、そこに金利を載せて、別の顧客に貸し出すことで、利益を得ている。
さまざまな手数料(例えば振込の手数料など)で利益を上げている一面もあるが、基本的には、預かり→貸し出しのビジネスで儲けているのだ。
と、いうことはお金を預けてくれるお客様と、お金を貸してくれと言ってくるお客様がいなければ、このビジネスは成立しない。
そのお客様を見つけにゆく、あるいは、既にいるお客様に、
「なにか御用はありませんか」
「新しくお金を借りませんか」
「お金をまた、うちの銀行に預けませんか」
「お金のことで、なにかトラブルはありませんか。お困りではないですか」
――などと聞いて回るのが、渉外の役目だ。
ゆえに、渉外こそ銀行の実戦部隊といっても過言ではない。渉外が預金や融資の案件を獲得し、なおかつ、お客様が直面している、さまざまな金融に関する問題を解決してこそ、その銀行は経営が成り立つし、顧客の信頼を得ることができる。
神山銀行は地方銀行だ。
地域の信頼を得て、それに応えることが企業の宿命とされている。
最初のコメントを投稿しよう!