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4-② 振り込め詐欺犯を捕まえろ!
時間は少しさかのぼる。
吟子が光瀬町支店に帰ってくる一時間ほど前のこと……。
昼下がり。
客足も遠のいた時間帯である。
大瀬良食堂の中で、プルルルル、と携帯電話が鳴り響く。
大瀬良さんの電話だ。
田舎の食堂といえど、もはや固定電話より携帯電話のほうが便利なので、大瀬良さんは数年前から携帯にしている。画面やボタンが大きな、お年寄りでも使いやすい『らくちんホン』だ。
大瀬良さんは、はいはい、と言いながら電話を取った。
「こんにちは、お世話になっています。【巽フーズファクトリー】のスズキと申します」
相手は、そう名乗った。女性の声だった。
【巽フーズファクトリー】は、かつてCM撮影の現場として大瀬良食堂を使いたいと言った漬物会社である。大瀬良さんは喜んで、
「あらあら、まあまあ、その節は」
スズキにかつてのお礼を言った。
スズキも笑い声と共に、大瀬良と話をした。
で、数分間。
そんな他愛ない会話を交わしたあと。
「CMの評判が上々なので、さらに追加でギャラをお支払いしたい」
スズキは、そんなことを言い出したのだ。
大瀬良さんは驚いた。
さらにギャラなんて、もらっていいのかしら。
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