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そう言うと、スズキは「もちろんです」と言って、
「ただし、その前に……五十万円を一度、うちの口座に振り込んでほしいのですよ」
そんなことを言った。
大瀬良さんは眉をひそめた。
「振り込み? わたしがお金を? どうして?」
「いや、それがですね……うちの上の者が言うには、大瀬良食堂さんは経営がうまくいっている食堂なのか、その証拠が見たいというんです。五十万円、ぽんと振り込むような食堂なら、経営はうまくいっているし、それなら安心して、ギャラを追加でお支払いできるって」
「うちの食堂の経営と、おたくがギャラをお支払いすることと、なんの関係があるの?」
「えー、つまりですね、【巽フーズファクトリー】としては、これからもずっと大瀬良食堂さんとお付き合いしていきたいわけです。またCMに大瀬良食堂さんを起用させていただくかもしれませんし。ですから、おたくの経営状態が万全かどうかを確かめてから、追加のギャラを払いたいんですよ!」
スズキは、やたらと饒舌だった。
「不思議に思われるかもしれませんが、これがなんといいますか、うちみたいな大きい会社の面倒なところでして。なんとかお願いできませんか……?」
スズキは、心底困ったような声で言った。
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