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その声音があんまりしょぼくれていたので、大瀬良さんは、かわいそうに思えたらしい。
「分かりました。じゃ、振り込みましょうかねえ。でも、わたしはあんまり振込とか、よう分からんですから、銀行員の方に聞いてみます」
「ああ! そ、それは……それはやめたほうがいいですよ」
「え、どうして?」
「窓口だと手数料が高くかかります。それよりもATMでやったほうがいいです。アタシがやり方を電話でお教えしますから!」
「はあ……分かりました」
大瀬良さんは、なんとなく奇妙に思いつつもうなずいた。
そして電話を切ると、タンス預金の五十万円を手に取ったのだ。
そしてお店を閉じると、バスで神山銀行光瀬町支店へと向かい――
「そこでばったりと、加奈ちゃんに出会ってねぇ」
「え? 加奈?」
話を聞いていて、吟子は怪訝顔を作る。
いきなり友達の名前が出てきたので、びっくりしたのだ。
「や、吟子ちゃん」
そこで、ひょっこり。
光瀬町支店の中から加奈が出てきた。
「加奈。あんた、なにやってんの!?」
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