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「ははあ、やっぱりいまの時代は危ないわねえ。なるほどねえ、気をつけないとねえ。怖いねえ……」
大瀬良さんは、顔を蒼くした。
両腕をさすり、こわいこわいという仕草を見せる。
そのときだ。パトカーがもう一台やってきて、中からスーツを着た若い女性が登場した。
吟子より数歳上、三十歳くらいだろうか?
キリッとした顔をした、ショートカットの凛々しいひとだ。
「はじめまして。神山警察署刑事生活安全課の板橋香奈枝です」
どうやら、今回の事件の担当者らしい。しかも刑事のようだ。
板橋香奈枝は、ぺこりと頭を下げると、支店長や大瀬良さんとあいさつをし合ってから、話を切り出す。
「今回の事件は、確実に詐欺ですね。【巽フーズファクトリー】に問い合わせてみましたが、だれもそんな電話はしていないとの回答でした。また、【巽フーズファクトリー】の中にスズキという名前の社員は何人かいますが、いずれも男性でした。電話をかけてきたのは女性ということでしたので、これもおかしい話です」
「おお……」
大瀬良が、顔をしわくちゃにする。
これで詐欺ということが確定した。
「大瀬良さん、スズキと名乗った詐欺師のことですが、相手の電話番号とか分かりませんか?」
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