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「そうそうそう、そうだった」
薄い茶色に染めた髪をひとつに結った、いわゆるポニーテールの髪をちょいちょい触りながら、携帯を片手に愚痴る吟子。
「冗談じゃないよ、銀行員の男なんて。給料はまだ我慢するとしても、もうとにかく体育会系で、いばりたがりで、酒の飲み方が汚くて」
『そこまで言う?』
「いや、ほんとなんだって。この前の飲み会なんて上司がいきなり上半身裸になって踊り出したりしてさ、もう最悪だったわ。で、別の男性行員がそんな上司を見てから、ウホッ! ボクも脱ぎまーす! なんて叫んだりして自分も脱ぎ始めてさ」
『それは……辛いね』
「でしょ? これセクハラでしょ、絶対。あー、思い出したら吐き気がしてきた」
『あーあもう滅茶苦茶だよ、ってやつだね。……うふっ』
「……いまなんで楽しそうに笑ったの? ま、いいや。とにかくね、銀行ってところは未だに昭和のオッサンのノリが強いわけ。その上、さっきも言ったみたいに給料もそこまでよくはないし――」
『吟子ちゃんとしては、銀行の男なんてノーサンキューってことね?』
「そうそう、それが言いたかったの」
『贅沢な気もするけどなぁ』
「確かにいまの時代、正社員の男ってだけでもありがたいのかもしれないけどさ」
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