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「さあ……よう分からんですね。この携帯にかかってきたのは間違いないですが……」
そう言って、大瀬良さんは携帯電話を板橋に見せる。
板橋は携帯電話をささっと操作した。が、すぐに顔を歪ませる。
「着信は公衆電話からか。……電話会社に、どこの公衆か調べるようにお願いして」
板橋香奈枝は、制服警官にそう指示した。
警官は「分かりました」と言って、なにやらパトカーに向かっていく。
(電話会社も、警察からの照会依頼なら受けるだろうな)
その光景を眺めながら吟子は思った。
銀行にも、たまに警察から照会依頼がくるのだ。
普通預金口座の●●は、刑法何条に違反している可能性があるため、法律に基づいて個人情報の照会を依頼する、といった文面の手紙が。
それを受けた銀行は、個人情報について記入して、警察に向かって郵便を返送するのだ。
(だけど公衆電話からかかってきたなら、電話の特定はできても、犯人の特定は難しいかも……)
吟子はそう思った。
板橋香奈枝も、そう考えたようだ。
「大瀬良さん。犯人はきっとまた、大瀬良さんの携帯に、電話をかけてくると思うんです」
「どうして?」
「犯人はまだ、詐欺がバレたと気付いていませんから。大瀬良さんに五十万円を振り込ませるために、必ずかけてきますよ」
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