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「そうか。ATMの操作を教えるって言っていたものね。そりゃ、かけてくるわよね」
「そうです。そこで大瀬良さん。これは依頼なのですが、もし次に詐欺師から電話がかかってきたら、お芝居をしてくれませんか?」
「お芝居?」
「はい。ATMの使い方がどうしても分からない。だから振り込めない。やり方を教えてほしいので、直接ATMまで来てほしい、と……そう言ってほしいんです」
「なるほどね、ここに詐欺師を呼び出して、逮捕するわけね?」
「そうです」
「ち、ちょっと待ってください」
そのとき、加奈が口を開いた。
「ここに犯人をおびき寄せるって……犯人がこの近くにいるとは限らないんじゃないですか? 詐欺師は、例えば東京から電話をかけてきているかも」
「いえ、犯人はおそらくこの近辺の人間です」
板橋香奈枝の断言に、その場のだれもが目を見開いた。
加奈はさらに、怪訝顔を作り尋ねる。
「どうして、それが分かるんですか?」
「大瀬良さんの携帯の番号は、食堂の貼り紙に書かれてあるものです。電話帳やネットには掲載されていません。それならば、犯人はその貼り紙を目にした可能性が高いわけです」
「あ……」
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