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「もちろん、他の都道府県の詐欺師が食堂にやってきて、その貼り紙を見た可能性もありますが……それよりは、この近辺の人間が犯人という可能性が高いと思われます」
板橋の整然とした口調に、吟子はなるほどと思った。
大瀬良さんも、合点がいったらしい。
「分かりましたよ、刑事さん。そういうことなら、お芝居に協力しますさ。なに、わたしはこれでも学生時代、演劇をかじっておったことがあります。うまく相手を騙してみせますわい」
意気込む大瀬良さん。
板橋香奈枝は、相好を崩して「お願いします」と言った。
――そのときであった。
プルルルル!
板橋香奈枝が持っていた、大瀬良の電話が鳴った。
全員が液晶を覗き込む。――公衆電話からの着信だった。
詐欺師だ。だれもが緊張の面持ちとなる。
大瀬良さん、ごくりとつばを飲み込むと、通話ボタンを押したものだ。
「はい、大瀬良です……」
大瀬良さんは、うまく芝居ができるだろうか?
吟子も、つばを飲み込んだ。
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