4-③ その姿に覚えあり!

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 その瞬間、スズキと板橋は、揃って露骨に目を見開いた。 「板橋!? お前、なんでここに――」 「あなた……杉山裕子じゃないの!?」  叫び合う、ふたりの女。  支店内に轟いた声音に、吟子はもちろん、だれもが一瞬あっけに取られ――  しかし我に返ったのが一番早かったのは、詐欺師のスズキであった。 「警察の板橋がいるなんて! くそっ、詐欺がバレたのか!」  スズキはそれだけ叫ぶと、長身を翻し、支店から逃げ出そうとする。  そんなスズキに、私服警官たちが「待て!」と駆け寄ったが、  プシューーーーーーッ!!  スズキはポケットに突っ込んでいた手を出すと、その手に持っていた小型スプレー缶を、警官たちに噴きつけた。 「う、うわっ!?」 「げほっ、げほっ……!」  警官たちは思い切り咳き込む。  銀行にもある、暴漢撃退用のスプレーに近いなにかのようだ。  スズキはそのまま、支店の外に飛び出る。そして支店の駐車場に駐車していたクルマに乗り込み―― 「待ちなさいっ!」  吟子は、スプレーに咳き込む警官たちの横を通り抜けて、支店の外に飛び出した。  しかし、時すでに遅し。  あたりに響く、エンジン音。  もはや間に合わない。 (あの車……!)     
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