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4-④ 謎の写真、そして
白い車が連なって、田舎道を走りゆく。
いずれも覆面パトカーである。
板橋と十数人の警察官。
さらには案内役の吟子を乗せた車たち。
光瀬町の住宅街に向かっている。
杉山裕子が使ったワンボックスは必ず住宅街にあるはずだ。
吟子はそう主張し、板橋たちと共に杉山の家に向かっているのだ。
「板橋さん」
吟子は、隣に座っている板橋に声をかけた。
「あの杉山裕子って詐欺師は、昔からずっと振り込め詐欺をやっているんですか?」
「……それは、いちおう個人情報に関わることなので」
「あ、そうか。そうですよね、すみません」
悪党にも人権は存在する。個人情報は保護されなければならない。
板橋は杉山裕子のことをなにも言わなかった。
だから吟子は、杉山裕子のことが分からない。
とりあえず、四十歳前後の女詐欺師。前科一犯は確実。
大瀬良さんを騙そうとしてきた人間。……それくらいしか分からないのだ。
(ま、分からなくていいんだろうけどさ)
今回、吟子がやるべきことは、一般市民として警察に協力することだけなのだ。
それ以外に、吟子と今回の犯人の接点など、ないのだから。
――ないはずだったのだ。
光瀬町の住宅街、光瀬町二丁目。
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