4-④ 謎の写真、そして

3/9
前へ
/277ページ
次へ
 言うまでもなく、ローンは安定した収入がある職業でないと組めない。  吟子がせっかく獲得したローン案件も、銀行本部から「この人はダメ」と却下されることもあった(却下された場合、当然営業の成績にはならない)。  だけど警察官ならば、よほどの借金でもない限り、まず審査は通る。 (やったね、あたし)  ニヤニヤが止まらない。  これで本当にローンを取れば、夏の賞与の査定も良くなる。  銀行の賞与査定は、上司からの勤務評価と、営業成績の目標達成具合によるのだ。  そして賞与をたくさん貰えば、これは上京費用になる。 「それじゃ、杉山の逮捕に向かいます。五十嵐さんは車の中にいてください」 「あたしは行かなくていいんですか?」 「ええ、ここまでくればあとは警察のほうでやりますから。犯人が暴れて五十嵐さんに危害が加わってもマズいですし」  それについては、確かにそうだ。  吟子はうなずき、覆面パトカーの中で待機することにした。  板橋以下、十数名の警察官が戸建ての玄関へと近付いていく。  さらに、逃亡防止のためだろう。家の裏手のほうにも警官がひとり、ふたりと移動していく。  その景色を、吟子は車の中から眺めていた。 (ま、なんとかなりそうね)  吟子としてはホッとした。     
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

305人が本棚に入れています
本棚に追加