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大瀬良さんは騙されず、犯人は詐欺未遂で逮捕され、自分はローンの営業先をゲットした。
今回も事件は無事解決、といったところだが――
「……あれ?」
板橋たちは玄関に立ったまま、何度もインターホンを押している。
しかしドアは開かない。杉山裕子は中に籠もる気だろうか。
(それとも、留守……?)
と、思って杉山宅をしげしげと眺める。
その瞬間である。
吟子は、見た。
杉山宅の裏手。浴室かトイレ用だろうか、小さな窓がある。
そして、そこから逃げ出そうとしている杉山裕子の姿を。
玄関にいる板橋からも、また、家の裏手にいる警察官からも見えない。
ちょうど死角になる位置に、その窓はあった。
「ちょ……!」
吟子は思わず叫んだ。
杉山裕子は、窓からはいずり出て、庭に降り立ち、そのまま、逃げ去ろうとする。
もう、黙っていられない。吟子は車のドアを開け、外に飛び出すと、
「板橋さん! 杉山が窓から逃げてるっ!」
絶叫した。
すると板橋や警察官たちは吟子のほうを見て――
杉山裕子自身も、ぎょっとした顔を見せる。
が、杉山裕子はすぐに我に返り、走り出す。
逃げるつもりだ。そうはいかない。
吟子は思い切り駆け出して、杉山裕子の前方へと躍り出した。
「逃がすもんか!」
「どけぇっ、コラァ!」
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