1-② 吟子さん、CMデビュー!?

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「吟子さん、まさにそこよ。大瀬良食堂の中で、白いごはんとお味噌汁、焼き魚が出される。そして最後に漬物が出てきて……みたいなCMにするらしいわ」 「へえー。……いいですね。いま昭和レトロってウケていますから」  吟子は、大瀬良食堂の外観を思い出した。  木造の、レトロすぎるにもほどがある外見は、いまとなっては逆に貴重だろう。 「私には、悪いけど古い食堂にしか見えないけれどねえ。若い人には逆に斬新なのかしら。……ま、とにかくそういう話よ」 「うーん、それで光瀬町商店街の知名度が少しでも上がったらいいですね。情報ありがとうございます。支店長にも伝えておきますね」  言いながら吟子は、テレビCMなんて、華々しい話だな、と思っていた。  自分もテレビに出演してみたい。モデルとして出てみたい。 (叶わぬ夢、なんだけどさ)  現実は、厳しいのだ。  ――お茶を飲みほした。  ごちそうさまでした、と言いながら、湯飲みを机の上に置く。 「それじゃ、お預かりした現金は確かに通帳に入れて、明日、持ってきますので――」 「ちょっとちょっと吟子さん、話は最後まで聞きなさいよ」 「はい?」  花屋を出ようとした吟子に、店主がなおも話しかけてくる。     
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