1-③ 夢は手軽に叶わない

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(うふ、うふふ。どうしよ、どうしよ。も、もしCMに出て、そこから口コミが出ちゃったりして人気者になったら……)  思わず、妄想してしまう。  CMがテレビで放送されてから数日――  リアルはもちろん、ネットのあちこちで話題になっている自分の姿! 『巽フーズファクトリーのCMすげぇ』 『めちゃくちゃ可愛い子が出てた』 『あれモデルさんかな?』 『地元の銀行員らしい。神山銀行の人だって』 『マジで? 神山銀行とか、どの支店も古くて汚くてATMの使い心地が悪くて金利も高いクソ銀行じゃんか。そこにあんな美女がいるのか!?』 『ことしは五十嵐吟子の時代だな! ガッキーならぬガッシーだ』 『ガッシー万歳!』 「……なんてなんて! えっへっへっへ!!」 「「「!?」」」  ニタニタ笑いながら妄想を広げる吟子。  彼女の中ではすでに『美人すぎる銀行員 五十嵐吟子』のサクセスストーリーができあがっていた。  それを見て、いよいよ怪訝顔を作るトップスリー。 「……やはり五十嵐さんにはなにかあったのだな」 「悩みでもあるんでしょうか」 「次長、五十嵐さんへのノルマ、きつすぎたんじゃないですか? それでついに頭に来て」     
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