プロローグ ところで銀行員のお給料っておいくら?

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『いや、そうじゃなくて。……それもあるけど。――吟子ちゃんってカレシいたことないのに、男に対してやけに強気だな、と思って』 「う」  思わず、絶句。  彼氏イナイ歴と年齢がイコールで繋がる吟子は、友人の口から発せられた容赦のない一撃に、気絶しそうなほどの衝撃を覚えた。  仕方がない。  仕方がないのだ。  女子高を出て、女子だらけの短大を出て、そこからすぐに就職した吟子である。男性とは基本的に縁がなかった。  ときどき出会いらしきものもあったのだが、よくも悪くもサバサバしすぎた性格と行動が――そう、居酒屋で飲み放題だと分かった瞬間に生ビールを三杯ほど一気に飲み干したりするところとか、ボウリングに行ったらスコア200を余裕で叩きだすところとか、卓球バーに行ったら男を全力で叩きのめしてしまうところとか、そういうところが欠点だった。――と、吟子は思っている。強すぎる女は男に敬遠されてしまうものだ。  そんなわけで吟子は、二十四歳になったいまでも男性と交際したことがない。 『吟子ちゃん、可愛いのにねえ』 「性格がダメなんだろうねぇ。どうせあたしは可愛げがないですよ」 『やさぐれないでよ、そんなことないよ。……うーん、顔は本当に可愛いし、背が小さいのも魅力的だし』 「チビのどこがいいのよ。もっと身長が欲しかったよ、あたし」     
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