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だが――その雨漏り、放置していていいものか?
嫌な予感がした。もしかしたら、それで食堂が閉鎖とか取り壊しになって、CM出演の話が流れてしまうかもしれない。
巽フーズファクトリーが……。
お漬物のCMの話が……!
そう思うと、もうだめだった。
居ても立っても居られない。
大瀬良食堂の様子が見たい!
「あたし、もう一回商店街に行ってきます!」
吟子はスーパーカブの鍵と営業カバンを手に取ると、駐輪場へ向かった。
残された融資係は、呆けた顔をしていたが――
吟子と融資係の様子を見ていたトップスリーは、こちらもまた、それぞれぽかんと口を開けた。
吟子はカブにまたがり、商店街へと疾走していた。
そして到着するなり、大瀬良食堂に飛び込んだのだ。
昼下がりなので、食堂にはだれもいない。
「大瀬良さん、神山銀行の五十嵐吟子ですっ」
元気よく叫ぶと、白髪のおばあちゃんが奥から出てきた。
大瀬良食堂の店主、大瀬良さんだ。
「吟子さん。どうしたかね、そんなに慌てて」
「どうした、じゃないですよ。この食堂、雨漏りがしているって本当ですか?」
「あら、もう聞いたの。さすが吟子さんは耳が早いね。……本当だよ」
大瀬良さんが、少し声を沈ませて言った。
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