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1-④ 百万円足りない!
大瀬良さんは、言った。
「前々から、ぽつりぽつりとは漏れよったけどな。おとといの雨がトドメやったなあ」
「大瀬良さん。今日は食堂を休みにしたって言いますけれど、いずれにしてもこのままじゃ、食堂はやっていけないでしょう?」
「そりゃ、雨漏りのする食堂でメシを食いたいモノ好きなんか、おるもんかい」
「雨漏りの修理はしないんですか?」
「そりゃしたいさ。だけど吟子さん、あんたも銀行の人なら分かるでしょうが」
「そうか、お金が……」
吟子が言うと、大瀬良さんはうなずいた。
「実は昨日、知り合いの業者さんに頼んで、修理の見積もりだけしてもらったんよ。そしたらねえ、うちは戦前から建っている木造建築だし、雨漏りのところだけじゃなくて、あちこちにガタがきているって言われてね。……簡単な修繕でも、百五十万円はかかると言われたよ」
「百五十万……!」
「わたしは国民年金と食堂の売上だけで、毎月カツカツでやっとるからね。貯金なんかないし、百五十万なんて言われたら、そりゃもう無理だわね。……もうちょっと、わたしが若くて、この商店街が賑わっていたころなら、なんとかなっただろうがねえ」
大瀬良さんは、また少し笑った。
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