1-④ 百万円足りない!

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 笑うしかないのだろう。  吟子は、押し黙ってから、大瀬良さんの様子を眺める。  それから食堂内を見回した。……古い。確かに古い食堂だ。柱など、真っ黒になっている。  吟子は思った。  この食堂は修理しなければならない。  このままでは、大瀬良さんの生活と仕事が成り立たなくなる。  それに―― (あたしのCMの話だって、流れちゃうかも)  巽フーズファクトリーは、大瀬良食堂を気に入って、この商店街を舞台としたCMを作りたいと言ったのだ。  その大瀬良食堂が使えないとなると、CMの話は別の場所に――  そう、例えば他のレトロな食堂にいってしまうかもしれない。  そうなると、吟子がCMに出演するという話は当然、なくなるだろう。  それは避けたい……。  と、思っていると、 「……はあ」  大瀬良さんは、深々とため息をついた。 「大瀬良さん、どうしました……?」 「いや……いよいよこの食堂も、もうおしまいかね、と思って」 「…………」 「戦前から続いた食堂でね、死んだ旦那が婿養子に来てくれて、それでなんとか続けてきた店なんだけどね。まあ終わるときは終わるなあ、と思うてねえ」 「……大瀬良さん」     
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