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「できるかもしれん、ちゅうことか? それができるなら、確かに助かるが」
「確たることはまだ言えませんが、とにかく上司に相談してみます!」
とにかく吟子は、大瀬良さんにそう言うと、食堂を出て、スーパーカブに飛び乗ったものだ。
大瀬良食堂の雨漏りは、必ず直す!
この五十嵐吟子が、救ってみせる!!
で。
「無理だな」
(はやっ!)
吟子から相談を受けるなり、直属の上司である代理は、即座にそう言った。
「あの、代理。もうちょっと検討していただけるとありがたいのですが……」
「検討もなにも……五十嵐さんもある程度、分かっていたでしょ。大瀬良さんの返済能力は決して高くない。毎月、生活がやっとだと言う。それで銀行から借りたお金を全額、返却できるのか? なるほど担保はあるようだが、それにしたって、あの土地の地方(じがた)の悪さ! 田舎のシャッター商店街の中にある土地、しかも土地の上には雨漏り真っ最中の木造家屋が残っている。そんな土地が担保としてどれだけの価値を有しているか。ちょっと考えたら分かるだろう」
「いや、それはその通りなのですが……」
実のところ、吟子もうっすら気が付いてはいた。
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