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大瀬良のおばあちゃんでは、雨漏りの修繕費用を借りられたとしても、返済できるのか、という疑問。担保の土地に価値があるのか、という疑問。
だが、それでも吟子は代理に話した。
大瀬良さんを助けたいから。
「あのおばあちゃんが、これから死ぬまでの間、雨漏りの家で過ごすなんて可哀想すぎます。……なんとかしてあげられませんか!?」
「五十嵐さん。銀行は営利企業なんだ。浪花節でやっているわけじゃない」
「それは……そうですが……」
「それに、ここで無理な融資をしたらどうなる? 大瀬良さんは昔気質の人だろう。借りたお金は返さねばならん! と張り切って、働いて、その結果、倒れでもしたらどうするんだ? それこそ可哀想だろう」
「ですが、代理――」
「五十嵐さん、あまり無茶を言って、代理を困らせるな」
そのとき秋山支店長が、話に入ってきた。
どうやら、吟子と代理の会話を聞いていたらしい。
「支店長。……なんとか融資できませんか?」
「聞いている限りは難しいな。土地の価値をよほど甘めに考えても、五十万円、出せるかどうか」
(百万円も足りない!)
「甘めに考えた場合でこれだからな。普通に考えたら、まず無理だ」
「…………」
吟子は押し黙った。
支店長まで出てこられては、もうこの案件はこれ以上、動きようがない。
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