1-④ 百万円足りない!

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 修繕費用の三分の一、五十万円を引き出すのが、やっとだということだ。  これでは雨漏りは修理できない。 (ごめん、おばあちゃん……)  吟子は顔を伏せた。  ――自分のCMのことなど、頭からは消えていた。  あのおばあちゃんの力になれなかった。そんな悲しみだけが、吟子の胸を支配する。  だが、そんな吟子を見て、支店長はニヤリと笑った。 「五十嵐さん、知恵を働かせてみろ。あきらめるのは最後でいい」 「え……」 「毎日毎日、カブで街中を駆けずり回って情報を集め、人脈を築いていくところに、地方銀行の強さがあるんだぞ」 「…………?」  吟子は、支店長がいきなりなにを言い出したのか、よく分からなかった。  支店長は、なお笑みを崩さない。 「五十嵐さんは、毎日の行動を日誌に上げているよね」 「あ、はい」  銀行員は、毎日の行動や獲得目標を、毎日、日誌に書き込んでいる。  今日は【フラワーむらかみ】様に行きました。  今日はヤマダ様のところへ行って、定期預金百万円をお預かりしました。  今日はタナカ工務店様に行って、融資の相談を受けました。  と、いうふうに。  そして直属の上司と支店長が、その日誌を日々、チェックするのだ。     
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