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1-⑤ 逆転の一手!
吟子は、光瀬町二丁目にやってきた。
ここは数十年前に開発された元・新興住宅街の一角だ。
高度経済成長期に建てられた一戸建てが、ところ狭しと立ち並んでいるのだ。
もっとも、どの家屋も既にガタがきており、デザインも古臭く、住民もほとんどが高齢化していて、いまとなってはこちらも商店街同様、寂れた風が吹いているのだが。
そんな住宅街の中を、吟子はゆく。
目的地は、大きな和風の邸宅である。
門扉には、留沢という表札がかかっていた。
「こんにちは。先ほどお電話をさせていただいた、神山銀行の五十嵐ですが……」
インターホンを鳴らし、相手が出るなり、吟子は名乗った。
事前にアポはとっていた。【フラワーむらかみ】の村上さんから、電話番号を聞いて、電話をかけていたのだ。
果たして、吟子の求めるその人物はすんなりと家から出てきて、吟子を出迎えてくれた。
がっしりとした、しかし気の優しそうな顔をした、三十代後半の男性である。
「あ、どうも。……留沢です」
留沢邦夫。
彼は、『大工のトメさん』の二代目だ。
正確にいえば、留沢工務店の二代目で、大工というよりは建築関係全般の仕事を受け持つプロであった。
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