1-⑤ 逆転の一手!

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 だから、大工仕事だけではなく、建築関係の仕事を多数引き受けている。  吟子は、支店長に言われて、思い出したのだ。  【フラワーむらかみ】の村上さんが言っていたことを。  ――二丁目の大工のトメさんっていたじゃない。あの人、先日亡くなったわよ。  ――大工は息子さんがあとを継ぐらしいわ。……だけどあそこの二代目は、腕はいいんだけど人見知りをする性格でね、営業がヘタだから、なかなか仕事が来ないらしいわよ。  吟子はその情報を、日誌に書いていた。  その日誌を支店長はちゃんとチェックしていたのだ。  だから、支店長は言ったのだ。日誌を見返せ、と。  そして、その二代目にうまく話をすれば、あるいは大瀬良食堂の雨漏りの修繕を、安くしてもらえるのではないか、と――  吟子は、留沢邸に入り、客間に通された。  そして対面型のソファに、留沢と向かい合って座ると、 「電話でも少しお話ししましたが――改めてお願いします。大瀬良食堂さんを、格安で修繕していただけませんか」  はっきりと告げたのだ。     
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