1-⑤ 逆転の一手!

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 支店長は、支店にいないことも多い。取引先と交渉に出かけたり、本店に出向いたり、ときには取引先の社長とゴルフに出かけたりもしている。  だが支店にいるときは――もちろん、いろんな仕事をしているが、支店長が毎日欠かさずしていることといえば―― (地方新聞を読んでいるよね)  ネットではなく、紙の地方新聞を、支店長は毎日欠かさず、隅から隅まで読んでいる。  もしかしてあれも、なにかしらの理由があって……?  吟子は、支店の裏へと急いだ。  そして古新聞の山を見つけると、漁り始めたのだ。  ……それから十五分後。 「見つけました、支店長」  吟子は支店長に、ドヤ顔と古新聞を見せつけた。 「支店長があたしに教えたかったのは、これのことだったんですね」  神山市住環境助成事業金。  その十一文字が、新聞の片隅で輝いていた。  光瀬町は神山市という市に所属しているが、この事業は、その神山市に在住している人を対象として行われる事業だ。  すなわち。  神山市に住んでおり。  一定以下の所得しかなく。  しかし税金の滞納はない。  そういう人が、住環境をよくするために家の修繕や改築を行う場合、一定の助成金を市が支払いますよ、という事業なのだ。  ただし、その修繕や改築を行う業者は、神山市の業者に限るのだが。  ……要するに、これも一種の公共事業である。     
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