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ともあれ、この制度を利用すれば、大瀬良食堂の修繕はできるだろう。
助成金は最大で三十万円まで支給されると新聞にあった。
留沢工務店が七十五万円で仕事をする。
神山市が三十万円を助成する。
神山銀行が四十五万円を融資する(五十万円までならなんとか貸せるというのが支店長の判断なのだから)。
どうやらこれで、絵は描けたようだ。
吟子は、にっこりと笑う。支店長も笑みを浮かべた。
「僕が地方新聞をいやというほど読むのもこういうことなんだよ。ネットは便利だが、自分の知りたい記事、興味のある情報にばかり触れる傾向になってしまう。どうしてもそうなる。けれどに新聞を隅々まで読めば、いろんな情報や知識が手に入る。いまは役に立たなくても、いつかは役立つかもしれない情報をね。……特に地方新聞は、こういう地域の小さな情報を掲載しているからね。地方銀行の人間ならば、地方新聞こそ丁寧に読むべきなんだ」
「……ごもっともです」
吟子は、笑顔でうなずいた。
――とりあえずあたしも、地方新聞読んだほうがいいかな。
支店長が読み終わったあとの新聞。こっそり読もうと決める吟子。
自分のお金で購読しようとはしないあたりが、安月給の現代人であった。
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