1-⑤ 逆転の一手!

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「ま、とにかくこれで、なんとかなりそうだな。もっとも、四十五万円の融資を大瀬良食堂さんが返済できるか、いまでも僕は疑問なんだが」 「それはなんとかなると思います」 「ほう。どうしてそう思う?」 「実は……」  吟子は、ここにきてようやく、支店長にCMのことを話した。  食堂を修繕すれば、CMの話は滞りなく進み、その結果、食堂の客がいくらかは増えると思われること。  そうすれば、融資分は回収できると思われること。  話を聞いた支店長は、高らかに笑った。 「それなら、四十五万円くらいは回収できそうだな!」 「はいっ!」  吟子はうなずいた。  うなずきつつ―― (これで、これであたしもいよいよCMデビューだ! ひゃっほう!!)  心の中で、熱いガッツポーズをとったものである。  それから、しばらく経って。  大瀬良食堂にて、いよいよCMの撮影が開始されたのだが―― 「美味しい! このおつけもの!」  たどたどしい声で、セリフを口にしている女の子がいる。  ショートカットの、素朴な顔をした、可愛らしい女性だ。  岡部加奈であった。  吟子の、高校時代の友人である。 (……どうしてこうなった)  吟子は、そのCMの撮影現場にいる。  そして、不服顔でその景色を見つめているのだ。     
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