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『ね、吟子ちゃん。よかったら今夜、ひさびさに会わない?』
「え、大丈夫? 加奈、仕事はいいの?」
『うん、大丈夫。今日は久しぶりに休みだから』
「そっかあ! いいよ、じゃあ、会おう。どこにする? ペンペン草でいい?」
ペンペン草とは、光瀬駅前にある小さな居酒屋のことだ。
この光瀬町支店から、早足で一時間はかかる場所にある。
それでも吟子は、ひさびさに友達と飲みたかった。
『ペンペン草でいいよ。時間は――』
「午後七時ジャスト! どう?」
『わたしはいいけど、吟子ちゃん、その時間でいいの?』
「今日は水曜日。定時退行日だからオーケー」
毎週水曜日は、午後六時に全員退行することが決められている。いわゆるノー残業デーというやつだ。
『銀行って夜遅くまで働いているイメージあるけどな。一円でも現金が勘定と合わなかったら家に帰れないって聞くし』
「それは本当。でも金額が合わないのって、お金がなくなってることより、たいていは機械にデータを入力し忘れてるのが原因だったりするから、調べたらわりとすぐに解決したりするよ。特にうちにみたいな小さな支店はね」
『へえー。そういう話、なんか面白いね。今夜、いろいろ聞かせてよ』
「そんなに面白い話かねえ」
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