301人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
1-② 吟子さん、CMデビュー!?
光瀬町商店街。
その名の通り、光瀬町のほぼ中央に位置しており、人口約一万五千人の光瀬町民がよく利用している商店街だ。
――といっても、それは過去の話。
いまや光瀬町商店街は、昼間だというのに人気も少ない。ほとんどゴーストタウンの様相を呈している。長年の不況。地方の衰退。少し離れた場所に作られたショッピングモールの存在、などなど、こうなった理由はいろいろあるが。
全盛期は三十軒以上の店が立ち並んでいたメイン通りは、いまやシャッター商店街となり、まともに経営されているのは、限られた数店舗だけだった。
吟子は、その数店舗に用がある。
「どうも、こんにちはー。神山銀行でっす」
元気よく叫びながら、各店舗に入り、店主に愛想よく挨拶をする。
そして、短く叫ぶ。
「売上を預かりに参りました」
そう、吟子が商店街で果たすべき仕事は、集金であった。
週に一度、吟子は必ずこの商店街にやってきて、各店舗の一週間分の売上を、通帳と共に預かっていく。
売上は現金で預かり、支店に持ち帰る。
それから、預かった通帳を用いて、口座にその現金を入金するのだ。
「こんにちは、吟子さん。いつもお疲れ様ね」
最初のコメントを投稿しよう!