我々の未来に

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我々の未来に

 世界は大混乱だった。超大国大統領に経験も人徳もない男が選ばれたのだ。それだけで市場は乱高下したが、本当の衝撃は外遊前に発された一言だ。 「我々の未来に内政不干渉の原則なんて無いそうだ」  内政不干渉、各国は相互にその権力と権威を侵してはならない。善良とは言いがたい為政者を守ってきた原則である。それが崩されては全面戦争しかない。  そこに別な意見が付け加わった。  大統領顧問団に未来人、タイムトラベラーが加わったというのだ。大統領の発言で問題なのは 我々の未来に だと言うのだ。  各方面からの問い合わせに報道官はこう答えた。 「我々には未来を保持する義務がある。だから未来人を保護しているとしてもその事実を公表することはない」  否定でないなら肯定。これが決定的になり未来人が現在の世界にどのような影響を及ぼすかが議論された。 「専門家であっても過去の時代に行って核兵器を作るのは無理だ。軍事的な影響は少ないだろう」 「現代の行動で未来は変化します。災害予測や賭け事なども現実味が薄い」 「一番の恩恵は未来の制度やシステムを先取りして導入することです」  事実、大統領府には軍事や科学ではなく社会学や外交の専門家が招集された。
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