悪魔のささやき

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悪魔のささやき

 翌日は、函館の(おも)だった観光地を巡ってみました。  五稜郭や倉庫群、摩周丸などふらふらと回ってみたのですが、私の周りが幸せそうな雰囲気に見えてしまい、私の気持ちはやっぱり晴れまないままでした。  そんなことをしているうちに、気が付けばもう夕方になっていました。  このまま函館にもう一泊してもいいかなと思ったのですが、行くあてのない旅路です。私は、さらに北に向かおうと思い、まずは札幌行きの特急列車に乗り込みました。座席は7割程度が埋まっていましたが、進行方向右の窓側にある席が取れました。  終点まで3時間以上はかかるそうで、北海道の広さを実感します。都会と比べると、まるで異世界のようです。  列車は函館本線を北上し、昨日降りた、新函館北斗という真新しい新幹線の駅で乗り換え客を乗せて、いかめしで有名な森駅を過ぎると、右手に青い海をみながら列車は進んで行きます。  その海の中に……、思い浮かんだのは、元カレとの甘い日々と、夢見た生活。  彼にはたくさん尽くしたはずなのに、なぜ私がこんな仕打ちを受けなければならないのか。  少なくとも、私は何も悪いことはしていないのに。そんなことばかり考えてしまいます。  海沿いの景色を見ながら、八雲(やくも)駅に止まった頃には日が暮れてしまいました。  さらに進んで、かにめしが名物の長万部(おしゃまんべ)に停車する頃には真っ暗。駅の光と都会に比べればわずかな街灯だけが灯っています。
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