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見破られて
「あんた、死に場所を探しに来たな」
目的を当てられてしまい。私は一瞬硬直してしまいました。
「そ、そんなことはないです」
ごまかそうとしましたが、彼はお見通しでした。
「さっき電車って言ったべ? ここにはディーゼルの車両しか来ないから、鉄道ファンは【列車】、地元の人は【汽車】って言うんだ。つまりあんたは鉄道好きではねぇっつーことだ」
「な、なりたてなもので、細かいこと、わからなくて……」
「とぼけても無駄だべ」
いよいよ逃げ道がなくなった私は、謝るしかありませんでした。
「す、すみません」
「謝らなくてもいいから、ちょっと聞かせてくれないか? あんたなんで死にたいと思うんだ?」
「わ、私は……」
少し迷いましたが、死にたいと思った理由を話しました。見ず知らずのおじさんだから、聞かれても困らないと思ったのです。
ひと通り聞いた後、おじさんはこういいました。
「それで死ぬのはもったいねえな」
今思うと、何を期待していたのかはわかりませんが、私はイラっと来てしまいました。
「そんな、知った風なこと言わないでください!」
しかし、おじさんは続けました。
「失恋したぐらいで死ぬなんて、無駄死にもいいところだろう」
容赦無いコンボを浴びせるおじさんに、私の怒りは頂点に達してしまい「どうもすみませんでした! 帰ります!」と言って、席を立とうとしました。
ところがおじさんは、さらなる攻撃を浴びせて来たのでした……
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