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カランという音が響き、ドアの向こうにはバーカウンターがあった。
『いらっしませ、ようこそ『BAR Pousse-Cafe』へ』
カウンターの向こうから、声がする。
黒いベストに蝶ネクタイ、白いワイシャツを着たバーテンダーがいた。
銀色の髪の毛に、蒼い瞳...外人さんかと思ったが、日本語が流暢だ。
「あ、あの…ここって、新宿の歌舞伎町のゴールデン街…ですよね?」
『いえ、違いますよ?ここは『Pousse-Cafe』…幾重にも色彩が重なった世界です』
会話になっていない。色彩が重なった世界?どう言う事だろう?
「でも、あたしはさっきまで新宿の歌舞伎町のゴールデン街を歩いていたんですけど…」
『その様ですね…もしかして『何かに悩んでいる』状況ですかね?
今の貴女からは「色彩」が見えないので...』
迷う?「色彩」が見えない?占いでもしてるのだろうか…
入る店を間違えたのだろうか。そう思っていると
『貴女には、本来「持っているべき色彩」があるはずです。
しかし、それすら見えない…「Monochromeの迷宮」に入り込んでしまった。
せっかくですから貴女の「色彩」を取り戻しませんか?』
そう言うと、バーテンダーはカウンターの席を勧めてくれた。
あたしはバーテンダーが勧めるままに、
リュックとサックスの入ったケースを横において席につく。
「あの、「色彩が見えない」ってオーラか何かですか?」
『いいえ、違います。貴女が「本来持っている色彩」です。
残念ながら、今はMonochromeの状況ですが…』
Monochrome…白と黒の世界って事かな?
色がない。それってどう言う事なんだろう?
「Monochrome、ですか。 でもあたしには色は分からないですよ。
だって...私「第一色覚」を持ってますから…」
そう、私は「第一色覚」という障碍を持っていた。
単色は分かるのだが、中間色は分からない「遺伝性の目の障碍」
『色覚の問題ではありません。そうですね…
簡単に言えば「まだ塗られていない塗り絵」みたいな状況でしょうか。
もしくは「白黒写真」を見ている感じといえばわかりますか?』
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