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01 淡い現実
書店で買ってきた本を三冊を、少女が眠っている近くの棚に置く。
眠るその少女はすっきりとした輪郭と整った鼻梁を持ち、唇と瞼は閉じたままであった。
同年代からも少し大人びた印象を与えていた美人の、ただでさえ白かった肌はあの日の雪のように色を失い、長い黒髪は少しだけ艶が失っていたようにも見える。端整な顔立ちから、彫刻や硝子細工の類なのではないかと思ってしまうほど綺麗で、少女の白く透き通った肌は触れたら最期、――粉々に砕け散ってしまいそうな儚さを感じさせるほど、生気が無く映った。
――まるで、本当に眠っているだけではなく、このまま目が覚める事は……
本を置いた少年の頭に過る不安の言葉を、目を伏せる動作で遮った。
白を基調とした明るい部屋であるはずなのに、どこか重苦しく感じるのはここが病院の一室だからという理由だけではないだろう。
少女は交通事故により頭部を強く打ち付けてから、半年以上は経ったが未だに意識は戻らない。昏睡状態が長く続いている。
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