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それ以来、私が人形を作ると、それに合わせて桜が靴を作ると言う関係が出来上がった。一方的に作って貰うだけでは悪いと思い、なにか報酬が欲しいかと桜に訊ねると、桜は相変わらずこう答える。
「それじゃあ、靴の写真撮って私にちょうだい」
「あい。でも、それだけでいいの?」
「だって、彼方は写真のプロになるんだから。プロの写真を貰えるなら安いもんよ」
確かに、私が本当に写真のプロになるのであったら、その写真にはそれなりの額が付くだろう。桜は、私が本当に写真が好きでプロを目指していると言う事をわかった上でこう言っている。だから、私は自分の夢から逃げちゃ駄目なんだ。
人形が売れるようになったら、それも嬉しいけれど。そう呟くと、桜は大変かも知れないけどそれも頑張れと、そう言ってくれた。
桜は昔から好きな靴を作って、私は写真と人形に没頭する。お互いにお互いの作品を見て切磋琢磨して。ひとりでは頼りなかったかもしれない夢へ続く道を、ふたりで歩けるのだと、そう思った。
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