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「わたしの好きな場所、できたで」
陽子ちゃんは繁みで見つけたダンボールを息を荒くして運びながら言った。
「どこ?」手伝いながら友美は訊く。
「ここや」
きらきら光る水面の上を、群れをなした鳥が横切る。土手を歩く老夫婦が二人を見てにこりと笑う。
川原の土手を登り、てっぺんでダンボールを敷いて、陽子ちゃんの後ろに乗る。くっついて離れないように陽子ちゃんにしがみつく。「せーの」で地面を蹴って土手を滑り降りる。転がり落ちそうになりながら二人を乗せたダンボールは勢いよく滑る。
跳ねるような陽子ちゃんの笑い声と、糸のように細い友美の叫び声が混じりあって高い青空に響く。
「もう一回やろう!」
陽子ちゃんが言って、友美は息を切らして追いかけた。
何度も何度も滑って、意味もなく笑って、へとへとに疲れて帰ると、母に汚れた服を怒られた。けれど友美は怖くなかった。えへへと笑って陽子ちゃんのことを思い出した。
友美が陽子ちゃんと仲良くしているせいで意地悪をしてくる男子が増えた。女子は露骨には出さないがなんとなく距離を取りはじめる。
元々友達の少なかった友美はそれほど気にしていなかった。それよりも毎日陽子ちゃんと帰ることが楽しみでならなかった。
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