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観察日記
あの家に入って遊んではいけません。
春休み目前の終業式で、先生たちは、私たちにきつく言い渡してきた。
以前から小学生が空き家に入って遊んでいると、近所の人が通報してきたのだ。
あの頃の私たちは、せっかくの秘密基地をそんなことで奪われることが理不尽でならなかった。
無論、間違っているのは私たちであることは百も承知だ。
しかしながら、幼さゆえ、私たちは、そんな大人を逆恨みしたものだ。
「せっかく私たちが見つけた秘密基地なのにひどいよね~。だいいち、そんなに入っちゃダメっていうわりには、鍵開いてるじゃん。」
「そうだよね。入っちゃダメっていうんなら、あの家を管理している人が鍵をかけるか、門を封鎖して入れなくしちゃえばいいんだよ。」
「ねえ、あそこに私、自分のマンガ置いてるんだよね。一緒にとりに行ってくれない?」
私は、親友のユリカに手を合わせた。
「えー、だって、今日先生が入っちゃダメって言ったばっかじゃん。」
「でも、私のマンガ取りに行きたいだけだもん。あのマンガ、結構気に入ってたから諦められないよ。」
「ごめん、今日は無理。私、スイミングあるから。」
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