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そう話しながら嫌がる仙崎くんの腕を捕まえようと手を伸ばして彷徨わせる。 ……よし捕まった。仙崎くんはヒッと顔を引きつらせる。
「あら、仙崎くんホントに傷口水で洗った? まだ砂が残ってるわね。軽く洗おっか」
「いーやーだ! 俺に苦しい試練を増やすなって!」しみるじゃん!
……なるほど、洗ってなかったのね。
「男の子でしょ、根性みせなさい!」
「せんせー、それ男女平等じゃないと思いまーす」(手を挙げながら)
「…………」(『こいつふざけんじゃねぇよ』という意味をこめた無言)
……まったく、最近の子は口だけが達者なんだから。厄介な相手ね。
私はその煽りを無視してふざけて上げた彼の手を難なく捕まえ直す。
「あ」
「はい蛇口の方いくよー」
「白石ちゃん容赦ねぇな!」
……そして数秒後、仙崎くんの悲鳴が上がった。
*
「あーもうホントありえねー……」
仙崎くんはイスに逆向きに座って背もたれに顎を乗せながらため息をひとつ。
背もたれを抱く様にしたその腕にはついさっき貼った少し大きな絆創膏が目を引く。
「白石ちゃんは傷に水かけたり消毒液かけてくるしさ、そんで俺が叫んだら開いてる窓から飯塚たちが顔のぞかせて爆笑してくるしさー」
この子はクラスの人気者で、友達も多い。(特に仲が良いのは同じクラスの飯塚くんと甲斐田くんのようだ)
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