第1章 3-夕暮れのひと時

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 俺の言葉に静かな微笑を返して、松澤は背を向けて歩き出す。  その余韻はすぅっと微かな風に溶けて、あっという間に過ぎ去った。  あー……やっぱイケメンの笑顔って罪だよなぁ……  そんなことを思いつつ、ちょっとさみしくなる。  もうちょっと話したかったなーとか、どっか遊びにも行きたかったなーとか色々思ったりもして。  だけど……良い思い出ができて、ホントに良かった。  俺は背を向けて、微笑しながら歩き出す。  ――――……この思い出は、誰にも話さないでおこう。  あいつがジュースをくれたのも、俺に笑ってくれたことも、心配してくれたことも、全部。  ずっと大切に心の奥にしまっておこう。  そうすればきっと、俺とあいつだけの秘密になるから。
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