序章-始まりなどないただの日常

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序章-始まりなどないただの日常

 俺が居るここは、都会とは言えないけど田舎とも言えない微妙な町。  数年前にできた新しい電車の路線で都会との行き来が容易になり、すっかり住宅地が増えてさらに目立たなくなってしまった。  ……そんでもって、俺はその中のどこにでもあるような普通の高校にいる。進学校でもないから偏差値もたいしたことないし、特別変わっていることはない。  ――――――キーンコーンカーンコーン。  待ち望んだ授業終わりのチャイムが鳴って、俺は教室内に溜まった窮屈な空気から解放される。 「あーっ、かったりぃー!」  思いっきり背を伸ばしていると後ろの席の飯塚が頭を小突いてきた。 「おい、テメーずっと授業中寝てたじゃねーか」 「だって秋吉の授業ねみぃんだもんー。随筆だかなんだか知らないけどアイツが文読めばなんでも子守唄になるじゃん」  その言葉と共に周りから複数の笑い声があがる。そして数人の女子や男子が俺のところに集まった。     その中で柔らかく髪を巻いた紗代(さよ)は俺の金髪を軽く触る。 「ねぇヒロー、まだ髪染めたまんまなの? また頭髪検査でひっかかったんでしょー?」     
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