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集中なんて出来ないけれど、私も数字の教科書とノートを開く。 そして、一応問題を解いてみたりする。 キミは長い指でそのスタイリッシュなシャープペンシルをくるんと回転させる。 そんな時、私の気持ちもキミの掌で踊っている。 余りに浮わついていて恥ずかしくなり、気持ちを引き締めてノートに向かうと、コロコロと角がなくなり丸くなった黒色の消ゴムが私のノートにぶつかった。 それを捕まえて顔を上げると、キミと目が合う。 「悪い、投げていいよ」 キミはオレンジ色に染まった髪を散らして、よく見えるように目に掛かっていたそれを退けた。 私は頷いて消ゴムをポンっと放った。 放物線を描いた消ゴムがキミの掌に包まれた。 「どうも」 キミはそう言って、もう一言何か言いたげに私を見つめていたけれど、また下を向いてノートに視線を戻す。 この時がオレンジ色で良かった。 私の顔がきっと赤くても、キミにはオレンジにしか見えなかっただろうから。 私はドキドキしたまま数字のノートを睨み付ける。 そうでもしないと、嬉しくて顔が溶けだすと思ったから。 それに、良かったと飛び上がりたくなる気持ちを抑えておきたかった。 変な奴だとキミに思われたくない。 やっと近寄れた斜め向かいの席だから。 時間が来てキミが立ち上がるまで私はいつもよりずっとドキドキしていた。 でも、キミは相変わらず何でもないように後片付けをし、バス停に向けて図書館を後にした。
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