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第4話 ご先祖様、怒り狂う。
「じゃ、お母さん、帰るから。明日には退院できるそうだから、今夜はゆっくり休みなさい。本当は今夜もいてあげたいんだけど、ゆみちゃんが体調崩したらしくてね、お母さん、ホールに出なくちゃいけないから……」
お母さんは言うと、あわただしく荷物をまとめ始めた。
あたしの昼食前に今日の着替えを持って現れたお母さんは、大あわてでロッカーの荷物をひっくり返している。
たった1週間の入院だったのに、気づけばこの個室には、あたしの荷物があふれ返っていた。
家から持ってきたパジャマにスリッパ、ぬいぐるみに花が生けられた花瓶が3つ。そして、友だちがそれぞれに持ってきてくれた千羽鶴や寄せ書きが、ところ狭しと飾られている。
「あ、大丈夫だよお母さん。明日の退院までに、あたしがまとめておくから。ゆみさん、どうしたんだろうね。元気が服を着て歩いてるような人なのに……」
「うーん、ホントにね。よりによって、今日は結婚式の二次会をお受けしてるから、お母さんが行かなきゃ回らないのよ。つむぎは、とにかくゆっくりしてなさい。一応退院の許可は下りたけど、まだ身体は本調子じゃないんだからね」
お母さんは持ってきたエコバッグに、ロッカーのお菓子や飲み物をつめ込んでいく。すべて、お見舞いに来てくれた友だちが持ってきてくれたものだ。病気だった訳ではないにしろ、大して食欲もわかずほとんど食べる事が出来なかった。
「……こんなに、たくさんのお見舞いを頂くなんて。本当にありがたい事だわ。つむぎは素晴らしいお友だちに恵まれているのね。しばらく休んで体力が戻ったら、学校でちゃんとお友だちにお礼をしなくっちゃね」
「あ、そ、その事なんだけど……」
ここを逃す訳にはいかないと、あたしはあわてて口を挟んだ。お母さんが手を止め、あたしを見る。
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