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第2話 あたし、一回死ぬ。
ぺぽ、とラインの通知音がして、あたしは嫌な予感に顔をしかめた。
ポテチを食べながら雑誌をめくっていたものだから、右手は油ぎっている。左手でうまいことスマホを手にとると、ロックを外した。
「うぇ……。やだなあ、またなんか買ってこいって言うんじゃないの?」
嫌な予感は当たるもので、やはりメッセージはお母さんからだった。その内容も思ったとおりで、あたしはがっくりと肩を落とした。
『つむぎ、ごめん! 牛乳3本と卵2パック買ってきて。団体さまが女性ばっかりなのよー』
ごていねいに、そのあとには土下座スタンプが続いている。うちの店はフレンチトーストが人気で、女性のお客さまはほぼ全員がそれを注文する。もう、だから予約の時点で、男女それぞれ何名さまかきいておけばいいものを……!
あたしはため息をつくと、仕方なしにソファを立った。
時計を見ると、もう9時だ。
とは言え、寝ていたというには早い時間だし、気は乗らないけど、出かけない訳にもいかないよねぇ……。
「冷凍できるフレンチトーストのレシピ、開発しなきゃ! まったく、カフェ経営者を両親に持ったばっかりに、中2にして深夜アルバイト、しかも無償って、どーゆー事なのよ!」
あたしは自分の部屋でパジャマのズボンをジーンズにはき変えると、お財布を手に玄関の扉を開けた。
外はまだ夏の名残をを残した、生温かい空気に包まれている。
目指すは、マンション下のコンビニ経由で、徒歩5分の距離に店を構えるうちのカフェ。
……ああ、今夜は新月なんだなー。
いつもより暗い街並みを眼下に見下ろしてから、あたしはエレベーターのボタンを押した。
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