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第3話 赤い着物の少女。
暗い暗い闇の底に、その少女は座っていた。
日本髪に金のかんざしを刺し、赤い打掛を羽織ったその少女は、声にならない声で何かを求め、叫ぶ。
会いたいと。
身を焦がすほどに愛したあの人に、もう一度会いたいと。
この手でその人に触れ、愛を告げ、きつく抱きしめ、そして抱きしめられたい。
あの人の声を聞き、漆黒の瞳を見つめ……いっそ、この身を捧げたって構わない。
気の遠くなるような時間、待って待って待ちつくしたあの人。
ただ、一度でいい。
あの人の腕の中で、目を閉じ、優しく口づけをされたなら……。
それだけが、少女の願いだった。
300年以上、暗い闇の底で叫び続けていた願いが、今、届く。
少女はありったけの想いをこめて、つむぎの意識に念を送った。
『さあ、目を覚まして。もう時間がないの。あなたは、わたしよ。わたしの願いを、今こそ叶えてちょうだい。起きて、起きて。時間がないの。もう、時間がないのよ…………!』
とぎれていたつむぎの意識に、電気に似た念波を連続して撃ちこむ。
つむぎの精神や身体がどうなるかなんて、少女にはどうでもいい事だった。
ただ自分の身を焼くような恋を、どうにかして成就させたい、その思いだけが少女を支配していた。
『起きて、……ねえ起きて。……てゆーか、起きろっ! ちょっとあんた、いつまでぼんやり寝てんのよっ。時間がないっつってんでしょーが! うちの家系は、こんくらいでぽっくりいっちゃうほど、ヤワには出来てないはずよっ。おいこら、そこの子孫、起きろ! オキロー!』
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