第3話 赤い着物の少女。

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 問うあたしの視界に、白衣の女性が割って入る。 「小野田さん、痛いところありませんか? 自分の名前は言える? はい、これ見て」  看護師さんが、あたしの目前でペンライトを左右に振る。それを目で追いながら、自分の名前を声に出した。 「うん、小野田つむぎさんね。対光反射も良好です。すぐにドクターが来ますからね。お父さん、お母さん、つむぎさんの意識、戻りましたよ。おめでとうございます」  看護師さんが言い終わらないうちに、お父さんとお母さんは、またあたしの足元でシーツをつかむようにして泣き崩れた。  その姿を見ながら、何か大変な事が起こったのだと、あたしはぼんやり思っていた。頭が働かない。そのままなんとなくお父さんの向こうに目をやった時、思わぬ色彩が目に飛び込んできた。  あたしの膝にすがりつくお父さんの奥に、真紅をまとった誰かが立っている。小さな人影だった。間違いなくこの場にそぐわない、その人物は……。
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