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近づいてきた先生の顔は、私の耳の横で止まる。
耳にかかる吐息に、体の力が抜けそうになった。
「…俺が教えてやろうか…。」
ゆっくりと、甘い声が響く。
授業でも、聞いたことがない声。
心臓がはねる。
「…恋心。」
「…へっ?…あっ…ぇ…。」
驚きのあまり間抜けな声しか出なかった。
「…俺に任せとけ、ちゃんと好きにさせてやるから。俺の事。」
その言葉と同時に先生の唇が優しく頬に触れる。
そして、私の唇の上を先生の指が走った。
「こっちは、お前が本気になってからな。」
優しく微笑む先生の瞳が陽の光に揺れた。
知らなかった恋心。
はじめて知った恋心。
恋に『落ちる』って言葉の意味を知れた気がした。
先生は、くくっと笑いながらも私から目を逸らさない。
「…冬休みまで補習は、毎日な。覚悟しろよ。」
その言葉に、顔が赤くなるのがわかる。
「……先生のバカ……。」
恥ずかしくてその言葉が精一杯だった。
はじめての『好き』は、
もう少しだけ待って。
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